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京都の端から、こんにちは 第41回

井上章一(所長)
2024年4月11日

 タイのバンコックに「京都」銀行があります。中華資本の銀行が、「京都」という看板で営業をしています。バンコックはタイの首都です。国王も、ここでくらしています。「京都」の名は、そんな都市で開設されたから、そえられました。

 「京」も「都」も、首都や王都をさす漢字です。「京都」とつづければ、首都の中の首都という意味になります。今の京都市、一地方都市にふさわしい名前ではありません。この呼称にそぐう都市は、なんといっても東京です。首都機能もあつまっているし、天皇もすんでいますからね。

 でも、日本の首都は東京を名のっています。「東」側の「京」とよばれてきました。古くから「京都」とされてきた旧都に遠慮をしたんでしょうね。首都の座や天皇はうつさせたけれども、名前まではうばわなかった。旧都に気をつかったんですよ。自分たちは、「東」の「京」でかまわない、と。

 でも、今の東京に、東京を東側の首都だと思っている人は、まずいません。その証拠に、西東京市という都市があります。東京の西側というニュアンスをこめ、2001年にそう命名されました。これを、「京」の東側の、そのまた西側とうけとめている人は、いないでしょう。