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RESEARCH

共同研究「貴族とは何か、武士とは何か」について

倉本一宏(教授)
2021年6月14日

 「日記の総合的研究」「説話文学と歴史史料の間に」に続いて、2020年度から、私にとって三度目、そして最後の共同研究「貴族とは何か、武士とは何か」がスタートした。

 疫病猖獗下、2020年度はなかなか研究会が開催できず、その後もリモート主体の研究会が続いた。何より、研究会の後の懇親会と「清談」を行なえなくなったことが、残念でならない(私は毎回、違う店で懇親会を行なうという記録を継続中である)。

 それはさておき、一見すると陳腐なテーマ(すでに大先輩たちが、「公家と武家」という共同研究を行なっている)で共同研究を行なうことの意味を、少し述べておきたい。

 すでに『戦争の日本古代史』『内戦の日本古代史』という本で述べたが、日本という国は、前近代に限れば対外戦争もほとんど行なわず、内戦も諸外国に比べれば極端に少なかった。そんな日本が、何故に近代の50年間のみ戦争に明け暮れるようになったのであろうか。これは日本の歴史を考えるうえで、もっとも重要なテーマである。 

 この問題を解くヒントの一つは、古代以来の対朝鮮関係と対朝鮮観であろうことは、すでに指摘したところであるが、もう一つのヒントは、武家政権の誕生と、その長期間にわたる存続であろう。日本は中国や朝鮮諸国とは異なり、武人による政権が現われ、それが700年近くも存続したのである。

 というわけで、何故に日本において武士が発生し、それが政治・経済・社会、そして文化の局面において重要な存在となり、そして貴族政権に組み込まれ、さらには政権を担う存在となったのか、古代史・中世史・近世史・近代史、さらには東洋史・西洋史の視点から解明する。

 前二回と同じく、日本を代表する研究者が集まってくださった。これも日文研のご威光であると、感謝に堪えない。

共同研究会の写真

リモート併用による共同研究会(日文研第1共同研究室)