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RESEARCH

共同研究会「縮小社会の文化創造:個・ネットワーク・資本・制度の観点から」について

山田奨治(教授)
2021年1月14日

 2019年度から3年間の予定で、タイトルにある名称の共同研究会を主宰している。研究の動機は図1に端的に表れているように、日本の人口が今後、これまでどの先進国も経験しなかったようなスピードで急速に減少し、高齢化していくことにある。人口の縮小・高齢化が社会経済に与えるインパクトについては、すでに各方面で研究と対策が進められているところであるが、それが文化創造に何をもたらすかは、案外語られてこなかったように思う。

 そこへ図らずも降ってきたのがコロナ禍である。世界中の社会・経済・教育・文化がいやおうなく縮んだ。身の回りからあらゆる活動が消え、縮小しきった冷えた社会を一時的に体感したような気がする。

 文化イベントが真っ先に補償なく自粛させられたことからわかるように、それは「不要不急」のものだとの認識が日本社会には浸透しているようだ。「経済を止めるな」はさかんに叫ばれるが、「文化を止めるな」とは文化関係者以外からはあまり聞かれない。かたやドイツの首相は、芸術支援を優先順位リストの最上位に位置づけると演説し、実際、アーティスト個人に対して素早く手厚い支援を行った。そういった話を聞くと、日本での「文化」なるものの、制度的なぜい弱さを思わずにはいられない。

 文化活動の立て直しに向けて、主にインターネットを使ったさまざまな取り組みがされている。Withコロナの時代では、またAfterコロナの時代になったとしても、誰もが予想するように、この変化が完全に元に戻ることはなかろう。ほんの数ヶ月のあいだに起きた変革は、未来の「小さな冷えた社会」での文化活動のモデルになることだろう。

 

山田先生画像

図1 日本の人口の推移(情報通信白書平成28年版より)