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退職にあたり

日文研の日々

ジョン・ブリーン(教授)
2021年3月12日

 日文研に着任したのは、もう12年も前になるが、あっという間に時間が過ぎ去ってしまった。いよいよ定年退職。人生の大きな節目だ。退職を楽しみにする同僚もいるが、私はそうではない。日文研を離れる時が来たと考えるだけで、寂しい思いがする。確かに辛い時と楽しい時と両方あったが、天秤にかけてみれば楽しい時が断然多かった。

 私は、英文学術雑誌Japan Reviewの編集が主な業務だった。前任の業績を踏まえ、また出版編集室のスタッフに日々頼りつつ、Japan Reviewを大事に育ててきた。編集長として世界中の研究者と交流ができ、また多くの優れた研究論文を読むこともできた。達成感のある仕事だった。考えてみればJapan Reviewは、日本研究者のグローバルネットワークのハブになっている。論文・書評の執筆者、査読者そして読者がネットワークの重要な構成員だ。このネットワークがこれからもどんどん広がっていくことを願っている。

Japan Reviewの最新号。

Japan Reviewの特集号。

 編集に多くの時間を捧げてきた私だが、研究をする余裕もあった。日文研は研究に最適な環境で、恵まれていた。着任して以来、伊勢神宮の近現代史、皇室の近現代史、そして京都の近代が研究の三本柱であった。伊勢神宮については、庶民的な巡礼地だった伊勢が皇室の「大廟」へと変貌していく過程に光りを当ててみた。皇室については、皇位継承儀礼に焦点を絞り、戦前・戦後の連続性・非連続性を新たな観点から語ってみた。京都に関しては、「三大祭り」の形成過程とまちの近代化との関係性を探ってみた。こうした研究成果を国内だけでなくアメリカ、ヨーロッパ、中近東、アジア、オーストララシアで発表することができた。日文研のおかげだと感謝している。

特別公開シンポジウム: 天皇と皇位継承(歴彩館、2019年11月9日)の場で「近代天皇制と皇位継承儀礼」について語る。

 編集と研究の他に楽しかったのは、総研大の院生との交流だ。指導したのは3名の院生だけだが、他の院生の論文もかなり読ませてもらった。多くの刺激を受け、多くのことを学ぶことができた。これからも院生の活躍を遠くからみて応援する。院生の学際性、国際性に満ちた研究成果を大いに期待したい。