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COMMUNICATIONS

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京都の端から、こんにちは 第52回

井上章一(所長)
2025年3月25日

 日本の茶会は、季節におうじたしつらいをととのえ、おこなわれてきました。たとえば、初夏の某月某日には、部屋を初夏の花でいろどります。出席者も、和装の場合は、初夏の花があしらわれた着物を、きてくるわけです。

 ところが、このごろは、その某月某日に、伝統的な初夏の花が、さきにくくなっています。いわゆる地球温暖化のせいでしょう。季節のすすみぐあいが、昔とはかわってきました。べつの花をえらぶか、それとも初夏の日取りをかえるか。そんな選択をせまられかねない御時勢になってきました。

 俳句の季語も同じです。蚊や蚊取り線香は、これまで夏の季語でありつづけました。だけど、今、日本の夏は暑すぎて、蚊がとびません。蚊取り線香も、真夏にはいらなくなっています。今後、俳句の世界は、どう対処していくのでしょうか。いずれにせよ、地球環境の変化は、まちがいなく伝統的な日本文化にも影をおとしているのです。

 総合地球環境学研究所と、いっしょにとりくむべきテーマかもしれません。この文章がきっかけとなって、共同研究がはじまればうれしく思います。まあ、地球研のみなさんは、読んでいないかもしれませんが。