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COMMUNICATIONS

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京都の端から、こんにちは 第38回

井上章一(所長)
2023年12月28日

 英語は、世界の共通語になっています。とりわけ、学術世界では、その傾向が強くなってきました。英語での業績が日本語でのそれより高く評価されたりもします。このままでは、斯界における日本語の価値が、遠からずなくなってしまう。そんな声も、聞こえてこないわけではありません。

 私も、せつない御時勢だなと思います。しかし、今の日本語にたいしては、ざまあみろという気持ちも、いだいてきました。

 私は関西人です。関西語を母語とする人間です。そして、日本の学界は関西語で書かれた論文を、いっさい受理しません。分野を問わず、はねつけます。たったひとこと関西語をまぎれこませただけで、みとめられなくなるのです。

 現代の共通日本語は、関西語を辺境の地方語においやりました。その日本語が、世界の舞台では、関西語と似たような立場におかれだしている。私がそれ見たことかと感じてしまうのも、そのせいですね。

 人は困難な状況にでくわすと、やけくそで冗談をとばすものです。今回の一文も、そういうものだと思って下さい。