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COMMUNICATIONS

着任のごあいさつ

戯作研究の「世界」と「趣向」

オリバー・ホワイト(特任助教)
2023年7月14日

 私は2023年3月に国際日本文化研究センターの国際研究企画室に特任助教として着任しました。ロンドン出身で、着任以前は、早稲田大学とニューヨークのコロンビア大学に所属していました。

 現在、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』関連のテクストを中心に、江戸後期戯作文学を研究しています。これまで、ジャンル意識、ユーモア、翻訳研究、書誌学、テクスト性、パフォーマティヴィティ、及び散文・韻文・挿絵の相互作用などの理論的展望を通して研究を行ってきました。

旧東海道の様子(箱根関所の近く)、本人撮影

旧東海道の様子(箱根関所の近く)、本人撮影

 日文研では、研究テーマをより幅広く展開し、戯作文学創作の中核となる2つの関連する概念、すなわち「世界」と「趣向」について掘り下げたいと思っています。戯作文学研究ではジャンル用語を使って作品を分類する傾向がありますが、それは、外側から考えた分類(言語学で「エティック」といわれるもの)で、江戸時代の実情にあってない場合があります。そのせいで、ジャンルの基準に合致しない作品の評価が下がってしまい、そのテクストの魅力と重要性が見落とされる恐れがあります。その点、「世界」と「趣向」という概念は日本の詩作と劇作から生まれ、江戸時代の戯作者が自身の創作を説明するのに使ったことが明らかなので、戯作文学分析のより適切な方法論的枠組みを作るのに役立つのではないかと考えています。

旧東海道の路辺に見つけた露しげきの射干(シャガ)、本人撮影

旧東海道の路辺に見つけた露しげきの射干(シャガ)、本人撮影