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COMMUNICATIONS

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京都の端から、こんにちは 第20回

井上章一(所長)
2022年5月31日

 国際日本文化研究センターの図書館は、前室が3層分の吹き抜けになっています。円形平面で、たいそう高いところに天井があるわけです。なかなか、迫力のある空間ですね。

 イギリスの大英図書館を手本にしてほしい。日文研側は、設計をてがける建築家の内井昭蔵さんに、そうたのんだそうです。なるほど、形じたいは、似ていなくもないですね。

 ですが、そのテイストは、アスプルンドが設計したストックホルム市立図書館に近い。若いころに建築を勉強した私は、そう感じます。見学にきた建築家たちも、たいてい同じ感想をもらしていました。内井さんからも、直接聞いたことがあります。ねらったのは、アスプルンド風だ、と。

 日文研からの注文は、大英図書館だったかもしれません。表面的には承諾しただろう内井さんですが、これをアスプルンド寄りにかえたんでしょうね。建築家は、時にそういうことをします。

 日文研の図書館は、大英図書館にあやかっている。先輩たちは、よくそう語ってきました。聞かされるたびに、私は、そうじゃないんだけどと思ってきたものです。今回は、後世への証言という含みもこめて、この一文を書きました。

図書館写真