COMMUNICATIONS
連載記事
京都の端から、こんにちは 第18回
井上章一(所長)
2022年3月30日
私には、ひとり孫がいる。もうすぐ、4歳になる。先日、両親につれられ、国立民族学博物館をおとずれた。そのことを、私は孫の母、つまり私の娘から聞いている。
ざんねんながら、孫は展示品のいくつかにおびえていたという。とりわけ、仮面がならべられた一郭では、恐怖がふくらんだ。母にしがみつきながらの見学となったようである。あの博物館も、孫にとってはお化け屋敷でしかなかったということか。
とちゅう、娘は孫をはげましたらしい。だいじょうぶ、ここはおじいちゃんのお友達がいるところ。なんにも、こわくない。泣かなくてもいいのよ、と。
なるほど、博物館では私の知人もはたらいている。館長の吉田さんとも、会議ではよく顔をあわす。同じ人間文化研究機構の仲間でもある。
しかし孫がかんちがいをするのはこまる。おじいちゃんも、じつはお化けの友達だったと思いこみだしたら、どうしよう。このごろは、そちらの可能性に、私のほうがおびえだしている。