COMMUNICATIONS
退任のごあいさつ
ジュリーに学ぶ「評価」心得 —プロレスにご用心
磯前順一(教授)
2026年3月2日
退職にあたり、沢田研二さん――ジュリーの言葉が浮かびます。
「自分はロック歌手? 歌謡歌手? 俳優? バラエティ? それぞれ言うことは違う。でも自分はジュリー。それだけ」。
評価は他人がするもの。「本当の自分は違うんです」と訂正するのは、ちょっと恥ずかしい――彼はそう語ります。さすがプロです。
近年、学問の世界でも「評価」は避けて通れない話題になっています。
けれど、「もっと好意的に評価してくれたら伸びるのに」と自ら説明を始める人を見ると、ジュリーならどう思うだろう、と考えてしまいます。
「ファンに“もっと褒めて”って言うのかな?」と。
昭和プロレス界のアントニオ猪木やジャイアント馬場は、自分より小柄な若者をスカウトしてリングに立たせました。「自分が大きく見えるから」。それも一つの技術でしょう。けれど、それを他人に強要し始めると話が変わってきます。
私も、ある人から言われたことがあります。
「大塚英志さんと磯前さんがいなければ、若手はもっと伸び伸びやれるのに」。
大塚先生と並べていただいたこと自体は光栄でした。
けれど、評価とは受け取る側が決めるものであって、出す側が調整するものではない。その境界を取り違えると、学問はプロレス以上に八百長じみてしまう。少し怖い話です。
そして定年を迎える今、何よりも問われるのは、自分自身がこれまでの学究生活をどう評価するか、ということでしょう。何事にも、終わりはあるものなのです。ようやく、さようならです。


