COMMUNICATIONS
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京都の端から、こんにちは 第49回
井上章一(所長)
2024年11月28日
札をつかう遊びがあります。古くからつづけられてきたそれは、かるた遊びと言われます。使用する札のことは、かるたとよばれてきました。いろはがるたや歌がるたが、その代表例にあげられます。語源はポルトガル語ですね。cartaが日本語にとけこんだわけです。
ただし、西洋渡来のトランプでつかう札は、カードになります。英語のcardを受容して、そうなりました。今は、このカードという言い方が、いちばん普及しています。商店の店先で売買にもちいられる札はカードです。研究者もメモをカードに書きこむことがあります。住民ひとりひとりを識別するのは、マイナンバーカード。かるたとは言われません。
ですが、医師のしたためる診療記録だけは、今でもカルテです。ドイツ語のKarteを日本化した用語ですね。そして、日本では英語のカードが、いちばん浸透しました。ただ、遊びの札と医師の記録だけは、ポルトガル語とドイツ語に由来する言葉であらわします。
日本における西洋文化受容のありかたが、それらの語彙からうかがえるようですね。