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京都の端から、こんにちは 第42回
井上章一(所長)
2024年4月30日
私は41歳になってピアノの練習をはじめました。いわゆる四十の手習いです。けっして、うまくはありません。それでも、年々上達はしています。以前より上手になっているという実感は、毎年いだいてきました。
子どものころから英才教育をうけたという人は、少なくないでしょう。プロの演奏家になるのは、たいていそういう人たちです。上達がはやいのも、彼らですね。中年からとりくみだした者は、進歩がのろいと思います。
ですが、幼児からの実践者は、頭打ちの時期をむかえるのもはやい。これ以上は成長できないという壁が、すぐにやってきます。これをのりこえられるのは、やはりえらばれた人たちにかぎられるわけです。
いっぽう、中年からはじめた者には、なかなかこの壁がたちはだかりません。進歩はおそいのですが、向上しつづけられるのです。私が今だに、もう69歳ですが、少しずつ上達しているのも、そのせいでしょう。
おさないころからはじめたという人たちに、負けおしみの強がりを披露いたしました。