COMMUNICATIONS
メディア・イベントとしての「本土復帰50年」とメディア・記憶・アイデンティティ
沖縄県は、令和4年(2022年)5月15日に本土復帰50周年を迎えた。日本本土及び沖縄では、この歴史的に重要な節目を祝賀するために、大きなメディア・イベントが開催された。政府レベルでの様々な事業・行事に加えて、一般メディアでも様々な動きがあり、例えば、NHKのサイトでは「本土復帰50年」にまつわる番組・イベントがリスト化され、その中ではNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』やNHK沖縄ニュース「おきなわHOTeye」による「特集『つなぐ 未来へ』」など、多数のメディアコンテンツが紹介された。
このようなメディア・イベントを「記憶」という観点から分析する海外の先行研究を参照すると、その出来事における社会的記憶、集合的記憶という観点において、イベントの準備から、記念式典の実施や社会の反応まで、すべての一連の動きが重要な意味を持っていることが分かる。では、「本土復帰50年」は日本社会においてどのような意味を持っていたのだろうか。
私はメディア・イベントとしての「沖縄復帰50年」を日本本土と沖縄、それぞれのメディアとそれぞれの「記憶」という多層的な視点から検討している。日本国政府や県がイベントのために準備した事業や行事は何を意味したのか。政府側が構築しようとする記憶は、いかなる認識と論理と実践によって国民への共有が図られたのか。記念式典は日本本土と沖縄にとって、それぞれどのようなメッセージを持っていたのか。メディアはどのようなコンテンツを作成し、それは「記憶」、あるいは「国家アイデンティティ」においてどのような意味を持っていたのか。
日本本土と沖縄の間に相違があるとすれば、その対立は、間違いなく現代における「沖縄復帰」への関心や認識の基礎となっており、日本社会の未来において重要な意味を持つに違いない。そのため、イベントの形式や内容を客観的に分析すること、そして日本本土と沖縄のイベントの特質と政府の意図を比較検討することが必要だと考えている。