COMMUNICATIONS
着任のごあいさつ
サイデンステッカーに導かれて
片岡真伊(准教授)
2023年8月22日
この春、研究部准教授に着任いたしました。日本近現代文学の英訳・編集・出版過程や受容・伝播について、特に第二次世界大戦後に英語圏で紹介された川端康成・三島由紀夫・谷崎潤一郎などの小説の場合に焦点をあてて研究をしています。
私が初めて日文研のことを知ったのは、川端の翻訳者として知られるエドワード・G・サイデンステッカーの資料収集をしていた時のことでした。イギリスの大学の修士課程で日本文学を学んでいた頃に「ニチブンケン」を耳にした朧げな記憶はあるものの、その存在を認識したのは、修士課程を終えた後にリサーチ・コンサルタント会社で働いていた時のことです。海外ブランドのローカライゼーションにかかわる中、再びアカデミアに戻り、言語・文化の「あいだ」の様相に焦点をあてた研究をしたいと志すようになりました。その関心のきっかけとなったサイデンステッカーについて調べる中で、彼が日文研で講演した時の記録を見つけたのです。
サイデンステッカーに導かれるようにして日文研とその博士後期課程の存在を知り、縁あって博士号を取得するまでの数年間を日文研で過ごしました。その後、国内外の大学機関で様々な経験をさせていただく中、折に触れて思い出していたのは、日文研の総合大学にはない静謐な研究環境、多様な背景をもつ研究者たちとの刺激に満ちたやりとり、そして訪れる度に様々な研究のインスピレーションをもたらしてくれる図書館のことでした。
旅をしたからこそ分かるこの環境の豊かさを改めて噛み締めつつ、日文研の魅力やそこから生み出される研究の発信、そして研究者たちの交流の活性化に少しでも貢献していければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。