COMMUNICATIONS
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京都の端から、こんにちは 第33回
井上章一(所長)
2023年6月28日
かつて、鶴見俊輔という哲学者がいました。もう、鬼籍に入っておられます。2015年になくなられました。今回は、その想い出をつづります。
鶴見さんは、電話を家におかなかった人です。連絡には郵便をつかわなければなりませんでした。急用ができて、やむをえず御自宅へ直接うかがったことがあります。もし、御不在であればこの件はあきらめようと、腹をくくりながら。
さて、私はいまだに自分のパソコンやスマートフォンをもっていません。旧式の携帯電話も、不所持をきめこんできました。私のまわりにいる人びとへは、迷惑をかけていると思います。
ですが、家には固定電話をおいています。鶴見さんとくらべれば、まだしも社会性はあるんじゃないか。そう、とつぜん思いつき、この文章を書きだしました。
デジタル媒体に背をむける私は、鶴見さんの衣鉢をついだ気になっているようです。まあ、そんなところしか継承できていないのは、おはずかしいかぎりですが。