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COMMUNICATIONS

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京都の端から、こんにちは 第23回

井上章一(所長)
2022年8月30日

 鴨川と木屋町の間をとおる道は、先斗町(ぽんとちょう)通とよばれます。通りの両側は、先斗町の名でしたしまれてきました。しかし、この地名を構成する漢字の「先」は、ぜったいに「ぽん」と読めません。いったい、どうしてこういう名前ができたのでしょうか。

 針や剣の先は、ポルトガル語だとpontaです。岬もpontaになります。そして、先斗町ぞいの鴨川では、16世紀ごろ岬状に河岸がとびだしていました。これを、当時日本へきていたポルトガル人が、pontaとよんでいた可能性はあります。その呼称に、日本側が「先斗」の字をあてたのかもしれません。pontaは「先」だと、意味をくみとって。まあ、「斗」は音をととのえるためだけの漢字だったんでしょうけど。

 この地名にかかわる由来説も、証明はされていません。ただ、検討すべき有力説として、知られてはいます。「ありがとう」の「オブリガード」起源説は、なりたたない。若いころの私は、ブラジル人にそう反論して、がっかりされてきました。でも、先斗町はポルトガル語起源かもしれない。この例をもちだして、社交的な姿勢をたもつ手もあったのにと、今は反省をしています。

所長掲載画像(古地図)