COMMUNICATIONS
境界と接点:分断された世界をつなぎなおす
2021年10月に日文研の准教授として着任いたしました。来日してから、ここ日文研に着任するまで、九州と北海道で過ごしてきました。どちらも、今日では少し日本という国の周縁に追いやられてしまっている感があります。日文研の研究施設は「京都の端」ではありますが、日本の文化的中心地である京都に住むことがどんな影響をもたらしてくれるのか、好奇心をそそられています。
こうした中心と周縁の関係は、私自身がいま取り組んでいる研究の鍵でもあります。私の研究は、境界研究(ボーダースタディーズ)という学際的な分野を扱い、現在の政治・地理・理論、そして記憶について問題提起を行うものです。時間的には近世から現代まで、空間的には沖縄から北海道までと、幅広い領域を対象に研究プロジェクトを実施しています。さらに、現在の日本の境界を越えて、パラオなど太平洋の島々、サハリンから中国東北部など東ユーラシア、またはインド北東部まで守備範囲を広げつつあります。
日文研での私の主な責務は、英文学術誌Japan Reviewの編集となります。前任のジョン・ブリーン教授は、退職されるまで10年以上にわたり編集長を務められました。このような尊敬すべき方の後任というのは難しくもありますが、刺激的でもあります。Japan Reviewは日文研と外の世界(もしくは、少なくとも英語圏)をつなぐ、非常に重要な接点です。そうして、現在日本で行われている、あるいは日本についての活気あふれる多彩な研究への窓口となっています。新型コロナウイルス感染症のパンデミックがいまなお猛威を振るい、移動の機会が日本国内に限られている中、日本内外の研究コミュニティの接点となるJapan Reviewの役割は、かつてないほど重要なものとなっています。今後Japan Reviewをさらに育んでいくことを楽しみにしております。