JP EN

COMMUNICATIONS

着任のごあいさつ

研究関心事の変遷

タイモン・スクリーチ(教授)
2021年12月14日

 日文研に着任したことをうれしく思っている。私は1990年代に芳賀徹教授(当時)に招かれ、初めて日文研を訪れた。このたび専任教員として戻ることとなり、非常に名誉なことと感じている。

 芳賀教授に招かれたのは第1次「春画ブーム」のさなかで、そこから拙著『春画——片手で読む江戸の絵』が生まれた。現在では文庫版に加え、英語、中国語、ポーランド語の翻訳も刊行されている。その後も、浮世絵とその広範にわたる影響、また天明・寛政期の文化についていくつかの著書を執筆してきた。しかし、それからは研究テーマを江戸初期へと大きく変更した。きっかけは、2013年が日英交流400周年の節目だったことによる。1613年、徳川家康はイングランド国王ジェームス1世から書簡と金メッキの銀製望遠鏡を贈られた。それから400年が経ち、日英両国で大規模な国際フェスティバルが開催され、私も共同委員長および歴史アドバイザーとして携わった。目玉企画として、私たちは英国製の望遠鏡を復刻し、駿府城のあった静岡市へ贈呈した。こうした経緯があり、2020年に著書The Shogun’s Silver Telescopeを刊行している。家康は平戸に英国商館が設置されてまもなく亡くなったが、家康の死と神格化という問題は私の関心を引くこととなった。現在の研究テーマは、東照大権現を祀る全国の神社ネットワークである。来年あたり、このテーマで著書を上梓したいと考えている。

 余談だが、現在、近世の琉球王国史についても研究している。日文研に着任する前は美術史学科に所属していた。今でも視覚に関する問題に関心があるのは変わらないが、私自身は自分を歴史学者だと考えている。

 

東照宮画像

東照宮[古写真データベースより](日文研所蔵)